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「思いつきサービス」の問題点

課題    

「思いつきサービス」の問題点(ニーズに基づいた援助の重要性)

 

Aさんの事例  

 Aさんは82歳の男性で、奥さん(81歳)と二人暮し。75歳のときに軽い脳卒中にかかったAさんは、病院から退院後、一応身の回りのこと(ADL)は自立していたものの、5、6年前より

寝たりおきたりの生活になり、79歳の頃から奥さんの介助を必要とするようになった。

 80歳になった頃、トイレに間に合わないことが多くなり、やむを得ず「おむつ」を使用するようになった。

 介護者である奥さんは高齢に加えて、オムツの世話などで腰痛をおぼえることもあり、Aさんにオムツを使用するようになって間もなく、市の保健婦に援助を申し込んだ。

 保健婦がAさんを訪問。

 保健婦の評価をまとめるとつぎのようになる。

 

  1. Aさんは軽い糖尿病と高血圧があるが、近所の開業医に定期的にかかっていて病状は安定している。
  2. 軽い右片麻痺があるが、食事は箸とスプーンでとれる程度のもので、目立つ拘縮もない。
  3. すでに3ヶ月ほど寝ていたために、トイレなどへの移動は不安定である。
  4. ADLは、排泄はおむつのほか、用意された食事をとること以外は全て奥さんが介助している。
  5. 奥さん(当時79歳)は、小柄で力も弱く、腰も曲がっていて、Aさんの介護には体力的に無理がある。

 

以上のような結果から、この保健婦の援助計画は次のようなものになった。

 

  1. 保健婦の月1,2回の訪問による、主として健康面のチェックと必要な指導。
  2. 奥さんの介護負担を軽くするために、週2回(当時この市では週2回の派遣が限度)のホームヘルパーの要請。ホームヘルパーには、訪問時に奥さんに代わってオムツ交換、清拭、時に入浴介助をしてもらい、同じに奥さんの家事も手伝ってもらう。

 

 

こうして数ヶ月が経過した。

そのうち、Aさんが軽いカゼにかかったり、夏期に(脱水症によると考えられる)元気をなくすことが重なったりで、次第に介助の量も増加し、活動性も徐々に低下していった。

 幸いなことに、この市ではホームヘルパーの派遣回数が必要に応じて増やせるようになったため、援助開始語1年目には週3回に、さらにその半年後には週5回(月から金)に、時間はいずれも午前

10時から午後4時までとなった。

 奥さんは月曜日から金曜日までの5日間、日中はホームヘルパーが世話してくれるので大変助かっているものの、Aさんが夜間に2,3回排尿する度に「オムツを替えてくれ」と起こされ、体力的に続かないと言い出す。この市ではまだ24時間サービス体制にはいたっていない。

 この2年間の寝たきり生活のために、Aさんの手足には拘縮が見られるようになり、オムツ交換時に同部のマッサージや、ベッドの上ではなるべく横向きに寝る時間を増やすなどの対策がとられるようになった。

 

 

 Aさんのケースは、一見すると”めぐまれたケース”と見えるかもしれない。現在のサービス体制で、週5日のホームヘルプサービスと月1から2回の訪問看護(訪問指導)はよほど運の良い例と言えるからである。しかし、ここで指摘しておきたいのは、Aさん夫婦の住む自治体のサービス体制のことではなく、2年間に及ぶホームヘルパーと保健婦の援助にも関わらずAさんの状態は徐々に悪化し、間もなく褥瘡もできてしまうような(終末状態にいたった)”援助のありかた”についてである。